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ユーザーと共創し価値をつくる「ファンマーケティング」の本質

概要

現代のマーケティングにおいて、「ファンマーケティング」という言葉を聞かない日はありません。しかし、多くの担当者の方がSNSアカウントの運用やコミュニティ設立に乗り出すものの、成果に繋がらずに苦戦しているのではないでしょうか。

「大きな声で売り込む」ことよりも、「信頼される場で、顧客とともに価値をつくる」ことに重心が移っている、SNS時代の「ファンマーケティング」について解説します。

【ファンマーケティングとは?】ブランドの魅力をファン起点で広げる

ファンマーケティングの定義

ファンマーケティングとは、企業やブランドに強い共感や愛着を持つ顧客との関係を起点に、双方向のコミュニケーションや参加・共創の機会を通じてエンゲージメントを高めるマーケティング戦略です。 

継続利用や推奨、顧客の声を生かした改善を促すことで、中長期的なLTVの向上と持続的な事業成長を目指します。単なる売上獲得にとどまらず、ファンがブランドの魅力を自発的に周囲へ共有・推奨したくなる関係性を築く点に特徴があります。

信頼・継続利用・推奨・価値向上へつながる好循環

ファンマーケティングが生む好循環の図。「対話・参加・共創」から始まり、「信頼と愛着」「継続・推奨(リピート・口コミ・UGC)」「改善・新しい体験」へと巡る4つのステップ。

ファンとの関係を育てることは、継続利用、口コミ、顧客理解、商品改善へとつながります。こうした価値の積み重ねが、価格や機能だけでは選ばれにくい強いブランド基盤をつくり、一過性ではないLTVの向上に繋がります。

なぜ今ファンマーケティングが必要なのか?

「人間らしいつながり」と、企業の価値観への共感

AIの台頭により、2026年の消費者トレンドとして、アルゴリズムへの懐疑や人間らしい触れ合いへの期待が挙げられています(※Mintel『2026年:世界の消費者トレンド予測を発表』)。人との関わりやつながりが希薄になるなか、ブランドには単に目立つことだけでなく、感情的なつながりや文化的な意味を重視する戦略が求められています。

ファンマーケティングで重要なのは、商品を買ってもらうことだけではありません。ブランドの姿勢、つくり手の思い、顧客の意見をどう受け止めるかを一貫して示し、「このブランドと関わり続けたい」と思える理由をつくることです。

フラッグの独自調査では、「好きなインフルエンサーのPR投稿でも、基本的には好みでなければ購買しない」と答えたユーザーが60%という結果になりました。有名でフォロワー数の多いインフルエンサーにPRを依頼しただけでは、購買に結び付くのは難しいと言えます。

好きなインフルエンサーのPR投稿でも「自分の好みに合わなければ一切購入しない」と回答した人が60.4%を占めることを示す、インフルエンサー施策に関する意識調査のグラフ。

消費者は、「そのインフルエンサーは商品のことを本当に好きなのか」「背景まで理解しているのか」「リピート購入しているのか」など、厳しい目でチェックしています。だからこそ、信頼できる「ファン」を育成し、ファン自身に発信してもらえる環境を整えることが重要になります。

SNSアルゴリズムの変化と「UGC」の重要性

2026年のSNSでは、「誰をフォローしているか」をもとに投稿を表示するソーシャルグラフだけでなく、ユーザー一人ひとりの興味や行動に合わせてコンテンツを届けるインタレストグラフが、より重要になっています。

SNSアルゴリズムの変化を示す図。従来の「誰をフォローしているか」に基づく「ソーシャルグラフ」から、興味関心を分析して情報を届ける「インタレストグラフ」中心へ移行している。

そのため、SNSや動画プラットフォームでは、企業の投稿がフォロワー全員に届くとは限りません。広告色の強い投稿は、見てもらいにくくなり、広く届けるには費用も高騰してしまいます。

一方で、同じ興味を持つ人が集まるコミュニティでは、共感や会話が生まれやすく、投稿への反応も高まりやすい傾向があります。大切なのは、たくさんの人に一度で届けることではなく、実際に使った人の声に耳を傾け、誠実に応え、よりよい体験へと改善を重ねることです。そうした積み重ねが、顧客からの自然な口コミや推奨につながり、ブランドへの信頼を育てます。

そこで重要になるのが、顧客が自ら発信する投稿やレビュー、体験談であるUGC(User Generated Content)です。ファンマーケティングでは、一方的に宣伝するのではなく、「役に立つ」「参加できる」「誰かに伝えたくなる」と思える体験をつくることが重要です。

こうした投稿や自然な会話は、利用者にとって価値のある情報として受け取られやすく、SNSのアルゴリズム上でも反応を得やすくなります。その結果、おすすめ欄や発見タブを通じて、新たな人に見つけてもらう機会につながることが期待できます。

IP・エンタメ活用がもたらす「ファン化への橋渡し」

企業が一方的にメッセージを発信するだけでは、ファンは育ちません。

ユーザーが自発的に参加し、応援したくなる関係をつくる鍵として、私たちが提唱するのが「エンタメ的アプローチ」です。これは、単に流行りのキャラクターを広告に起用することではありません。本質は、ユーザーの感情を動かす「体験」と、思わず誰かに語りたくなる「余白」を、コミュニケーションの中に用意しておくことにあります。

ファンが自ら語り出す「体験」と「余白」

① 「体験」によるワクワク感と納得感

メッセージをただ伝えるのではなく、キャンペーンやコンテンツを通じて、ユーザー自身が「参加し、体験する」プロセスを提供します。自らの体験から得た楽しさや納得感こそが、ブランドへの深い愛着(エンゲージメント)の源泉になります。

② 自分の言葉を乗せたくなる「余白」

綺麗に作り込まれすぎたコンテンツは、時にユーザーが入り込む隙をなくしてしまいます。あえてファンが考察したり、自分なりのアレンジを加えたり、意見を乗せてシェアしたくなる「文脈の余白」を残しておくこと。これにより、ファン自身の言葉によるリアルな評価が広がっていきます。

IP・エンタメ活用のメリットを図解した画像。「参加して体験する」「自分の言葉を重ねる」プロセスを経て「ファンの発信が広がりリアルな評価(UGC)になる」流れを示す。

IP・エンタメ活用がブランドとの接点をつくる

ユーザーの興味・関心に合わせて情報が流れるインタレストグラフの時代において、企業が関心を惹きつける強力な武器となるのが、IP(キャラクターや作品)やエンタメ文脈の活用です。

ユーザーがすでに愛着を持っているエンタメの文脈を掛け合わせることで、心理的なハードルを下げ、親近感を持って情報に触れてもらうことができます。結果として、認知からファン化にいたるまでの「ブランドと出会う強力なきっかけ」を生み出し、マーケティングの成果を高めることができます。

【独自データ】IPコラボ・エンタメ施策が及ぼす意識変化

フラッグが過去に実施したIPコラボに関する独自調査では、IPコラボのコンテンツを、広告だと強く意識せずに見ているユーザーが多いことが分かりました。

好きなコンテンツとのコラボ広告に対し、Z世代の35.76%、30代以上の29.24%が「広告だと気づかずに見てしまう」と回答したことを示す意識調査の棒グラフ。

これは、ユーザーがすでに好きな作品やキャラクターの文脈で情報に触れることで、広告に対する構えが小さくなるためです。単に商品を知ってもらうだけでなく、「気になる」「参加したい」「応援したい」という気持ちにつながりやすくなります。

IPやエンタメを活用した施策は、ブランドとの最初の接点をつくり、ファンになるきっかけを生み出します。認知から関心、そして愛着へ。エンタメの力は、この流れをより自然に進める後押しになります。

まとめ:ファンの熱量を、一過性の話題ではなく、ブランドの価値へ。

2026年の市場では、顧客に一度選ばれるだけでなく、長く応援してもらえる関係をつくることが重要になっています。

ファンマーケティングでは、データをもとに顧客を理解しながら、対話や参加の機会を通じて、信頼と愛着を育てていきます。大切なのは、顧客を単なる購入者として捉えるのではなく、ともにブランドの価値を育てる存在として向き合うことです。

その際に、顧客の気持ちを動かし、「参加したい」「誰かに伝えたい」と思える体験をつくる手法として、エンタメ的アプローチが役立ちます。

体験や共創の機会を通じてファンとの関係を深めることで、一時的な話題で終わらない、長く選ばれるブランドを育てていくことが大切です。

桜井 あさみ

グロース戦略室 マネージャー

2010年7月入社。
自社とクライアント双方の成長を支える戦略立案と、新規事業の創出を担うチームのマネージャーに就任。デジタルマーケティング戦略設計のプランナーとしても日々奮闘中。

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