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Anime×Game Festival 2025現地レポート!「いにしえのコミケ」的熱気から見る日本企業のチャンス

概要
韓国・ソウルで2025年12月5日から3日間開催された、韓国最大規模のサブカルチャーフェスティバル「Anime×Game Festival 2025」に参加してきました。7月にロサンゼルスで開催されたAnime Expo 2025に続き、海外におけるエンタメビジネスの状況をレポートします。
目次
- Anime×Game Festivalとは?
- 拡大を続けるイベント規模と韓国での立ち位置
- 会場の熱気と「いにしえのコミケ」的空間
- 出展状況:現地で際立つ日本IPと日韓市場構造の違い
- 日本企業の出展とコンテンツの訴求力
- 日本とは異なるゲームプラットフォーム事情
- 今後の展望:注力すべきは「女性ファン」獲得
Anime×Game Festivalとは?
拡大を続けるイベント規模と韓国での立ち位置

Anime×Game Festival(AGF)は2018年から韓国で開催され、今回で6回目となるアニメとゲームのイベントです。2024年の来場者数は前年比10%増の7.2万人、出展社数も過去最多の75社でした。日本の同様のイベントと来場者数を比較すると、AnimeJapanは約15万人、東京ゲームショウは約26万人で、これらに比べると規模では劣るものの、今後も参加者の増加が見込まれ、韓国のエンタメ業界にとって重要なイベントです。
韓国ではG-STARというゲームショウが2005年から開催されており、来場者数は約20万人とAGFを上回りますが、今年のAGFに出展していた韓国ゲームメーカーの関係者によれば、AGFの来場者はアニメ好きが多く、手がけるゲームの種類によってはマーケティング上、G-STARよりAGFを重視することもあるとのことでした。
会場の熱気と「いにしえのコミケ」的空間

今年から金・土・日の3日間開催となり、初の平日開催となった初日(金)は参加者が少なく、やや盛り上がりに欠ける印象でしたが、週末になると参加者が一気に増え、会場は活況を呈していました。参加者層は20〜30代の男性が多く、日本やアメリカの同様のイベントと比べて女性参加者が極めて少ない印象でした。
出展各社のブースやイベント内容を見ても、女性向け作品の展示が少ないことが印象的でした。日本から声優を招いたイベントも数多く開催され、各所でオタ芸が披露されていました。日本のエンタメカルチャーに詳しい韓国人いわく「いにしえのコミケみたい」とのこと。確かに、そうした雰囲気を感じました。
出展状況:現地で際立つ日本IPと日韓市場構造の違い
日本企業の出展とコンテンツの訴求力

出展社は韓国のゲーム会社やアニメ・メディア企業が多く、日本からはアニプレックス、ブシロード、アニメイト、Cygames、にじさんじ、JETROなどが出展していました。日本企業の出展数自体はそれほど多くありませんが、アニプレックスは「鬼滅の刃」と「Fate/Grand Order」の特大ブースを構え、韓国ゲームメーカーNHNのブースでは「推しの子」のパズルゲームが大々的に訴求されるなど、日本発のIPも大きな存在感を示していました。
日本とは異なるゲームプラットフォーム事情

全体としてはゲーム系ブースが中心で、韓国のエンタメ市場はゲームが主軸であることを改めて実感しました。韓国のゲーム市場規模は中国、アメリカ、日本に次ぐ世界第4位で、国内には自社開発を行うゲームデベロッパーが多数存在します。古くは「リネージュ」などのオンラインRPGが有名でしたが、現在はスマホゲームが市場の半分以上を占めています。また、日本に比べるとコンソールゲーム(PS、Switchなど)の比率が低いことも特徴です。
興収65億円のヒットが証明する「日本アニメ一強」の現状

韓国のオリジナルアニメ関連ブースはあまり見当たりませんでした。やはりアニメは日本の作品が強く、今年公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、韓国国内の興行収入が約65億円で、2025年の年間興行成績で第1位となっています。アニメファンの増加に伴い、今後は韓国のアニメスタジオが手がけるオリジナル作品も増えてくるのではないかと思います。
今後の展望:注力すべきは「女性ファン」獲得
イベント全体を振り返ると、熱量の高い参加者が増えているのは心強い一方、今後の成長には女性ファンの獲得が課題だと感じました。乙女ゲームやBLなど女性向け作品の出展がほぼなく、またアニメやマンガのブースに立ち寄っている女性やカップルが多く見られたことから、この分野は韓国における今後の成長領域の一つと捉えられます。
韓国でヒットしている日本作品の傾向を見ても、決して女性ファンが少ないわけではなく、適切なコンテンツ提供ができていないがゆえの需給ギャップが生じているのではないかと考えられます。今後のAGFでは、この点にも注目していきたいと思います。


久保 浩章
株式会社フラッグ 代表取締役
東京大学経済学部在学中の2001年にフラッグを創業し、04年1月に株式会社化。映画をはじめ、エンタメ業界のデジタルマーケティング支援を中心に手掛ける。


