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ゲーム×映画の進化論 なぜ今、ゲーム原作映画が熱いのか?

はじめに

『8番出口』『マインクラフト/ザ・ムービー』など、近年ゲーム原作映画のヒットが続いております。このコラムでは、ゲーム業界の動向を踏まえながら、なぜ今ゲーム原作映画が盛り上がっているのか、その背景と今後の展望について考察します。

目次

東京ゲームショウと日本のゲーム市場の回復

(引用:PR TIMES

今年も東京ゲームショウの季節がやってきました。コロナ禍で2年連続開催中止となったものの、その後は回復基調にあり、2024年には過去2番目となる動員数を記録しました。今年は昨年を上回る過去最多の出展社数となり、動員数も記録更新となるか注目されています。

ゲームショウの回復・盛り上がりと同様、日本のゲーム市場もコロナ禍で劇的な成長を遂げ、その後も高水準を維持しています。こうした状況の中、近年はゲーム原作映画のヒットが相次いでいます。

「カンヌ国際映画祭2025」総括

近年大ヒットを記録しているゲーム原作映画

(引用:東宝MOVIEチャンネル

2023年公開の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は全世界で13億ドル以上の興行収入を記録し、それまでのゲーム原作映画の興行収入を大きく上回って歴代No.1となりました。また、2025年公開『マインクラフト/ザ・ムービー』も興行収入10億ドル近くという大ヒットになっています。邦画でも、インディゲーム原作の『8番出口』が公開3日間で今年公開された実写映画No.1となる興行収入を記録し、大ヒットとなりました。

かつて多かった“残念”な作品とその変遷

これまでも多くのゲーム原作映画が制作されてきましたが、かつては洋画・邦画問わず“残念”な作品が多数ありました。『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993年)、『ストリートファイター』(1994年)、『ファイナルファンタジー』(2001年)、『TEKKEN -鉄拳-』(2009年)などなど…
(ちなみに『ストリートファイター』は2026年に新作が公開予定なのでリベンジに期待)

ビジネス的には成功と言われる映画『バイオハザード』シリーズも、内容面ではゲームファンから厳しい指摘が多く、クオリティとビジネス両面で大成功と言える作品はなかなか現れませんでした。ヒットしたゲーム作品のクオリティに対して、映画作品のクオリティが追いついていない作品が多かったとも言えます。しかし近年、このような“もったいない”状況が大きく変わり、ヒット作が多数生まれていることはゲーム業界・映画業界双方にとって千載一遇のチャンスです。

ゲームIP映像化が進む理由と企業動向

任天堂などによるIP活用・映像化ビジネスの拡大

(引用:任天堂株式会社公式HP

こうした状況を受けて任天堂は2025年8月、自社ゲームIPの映画化推進を目的にニンテンドースターズ株式会社を立ち上げました。すでに発表されている「スーパーマリオ」続編や「ゼルダの伝説」の映画化など、強力なゲームIPの映像化だけでなく、商品化やイベントなど二次利用事業にも力を入れ始めています。他社も今後この流れに追随していくことでしょう。

ゲーム作品映画化が進む3つの理由

このように、今後ますます進むと考えられるゲーム作品の映画化には、大きく3つ理由があります。

一つ目は原作ゲームの認知度を映画マーケティングに活用できる点です。グローバル市場で展開される人気ゲームIPの場合、その知名度によって非常に効率的なマーケティング活動が可能になります。

二つ目は、ゲーム自体がどんどん映画的演出を取り入れており、両者の境界線が曖昧になっていることです。最近では高画質かつロングムービー展開など映像作品さながらの演出が増えており、ユーザー側もその作品の映画化を違和感なく受け入れやすくなっていると言えます。

三つ目は原作発掘手段としてのゲーム活用です。インディ系タイトルなど斬新で挑戦的な設定・物語性を持つ作品が増えており、それらはSteamなどオンラインプラットフォームによって資本力問わず世界規模でプレイされています。漫画や小説以上にグローバル志向な原作発掘手段として注目されています。

おわりに

こうした理由から今後もさらに多くのゲーム作品が映像化されていくでしょう。僕が子どもの頃に「ヒットしたゲーム原作映画は絶対ツマらない」と思っていた呪縛からやっと解放され、どちらも楽しめる時代になったことに心から感謝!

ライター

久保 浩章

株式会社フラッグ 代表取締役
東京大学経済学部在学中の2001年にフラッグを創業し、04年1月に株式会社化。映画をはじめ、エンタメ業界のデジタルマーケティング支援を中心に手掛ける。

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