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現地から最速レポート!エンタメ企業社長が語る「カンヌ国際映画祭2025」- 映画祭の総括編 –

概要

このコラムでは、最も権威ある映画祭とされる「カンヌ国際映画祭」について、2025年の日本作品の参加状況やコンペティション結果を受け、日本映画の今後の展望を解説。

実際に「カンヌ国際映画祭2025」に参加したフラッグ代表の久保の、現地レポートとなっております。

イベントの特徴や現地の様子、映画業界における重要性などを幅広く解説した、「現地から最速レポート!エンタメ企業社長が語る「カンヌ国際映画祭2025」- 映画祭の基礎知識編 -」も併せてご覧ください!

目次

日本作品や日本人俳優の参加状況は?

日本の業界人としてはまだまだカンヌビギナーである久保が現地で感じた、2025年の映画祭とマルシェの様子をレポートしたいと思います。

久保もドレスアップしてレッドカーペットを歩きました!

著名人が彩るレッドカーペット

やはり映画祭の華といえば有名俳優、セレブ達のレッドカーペットです。コンペ作品の試写会場入り口にレッドカーペットが引かれ、そこに多くのカメラが待ち構えています。

今年はトム・クルーズ、アンジェリーナ・ジョリー、ナタリー・ポートマン、エマ・ストーン、レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デニーロといったハリウッドの有名俳優をはじめ、日本人では広瀬すずさん、吉田羊さん、三浦友和さん、二宮和也さん、小松菜奈さん、吉沢亮さん、横浜流星さんなど多くの俳優達が登場しました。一般のファンの人たちもレッドカーペット近くに大勢集まっていて、有名人が登場すると歓声が上がっていました。

日本作品の参加状況

日本作品は今年も上映されており、コンペティション部門には早川千絵監督の『ルノワール』、ある視点部門には石川慶監督の『遠い山なみの光』がノミネート。コンペ以外では川村元気監督『8番出口』がミッドナイトスクリーンで、監督週間では李相日監督『国宝』と団塚唯我監督『見はらし世代』がワールドプレミア上映。その他部門での上映も含め、合計10本の日本映画が上映されました。

日本映画を世界へ広める「JAPAN NIGHT」

そんな中で、今年2回目となる「JAPAN NIGHT」というイベントが開催されました。これはタレントで最近は映画のプロデュースも手がけるMEGUMIさんが、映画に携わる世界各国の関係者の交流を目的としたイベントで、カンヌ入りしている日本の業界関係者はもちろんのこと、俳優の山田孝之さんや賀来賢人さんといったキャストやスタッフも多く駆けつけていました。

日本に興味がある人や日本と共同でプロジェクトを進めている人など多くの海外の業界人など、総勢1,000名を越える人たちが参加して盛り上がっていました。こうしたイベントは世界における日本および日本映画界のポジショニングを維持・向上していく上で、地味だけど重要な活動だなと改めて実感しました。

日本の映画を世界へ!JAPAN NIGHTは世界中の業界人が集い、盛況でした。

「カンヌ国際映画祭2025」総括

各種受賞結果

コンペティション部門ではイランのジャファル・パナヒ監督『シンプル・アクシデント(原題)』が最優秀賞のパルム・ドールに輝きました。パナヒ監督は『チャドルと生きる』でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞、『人生タクシー』でベルリン国際映画祭の金熊賞も受賞していて、今回のパルム・ドールで世界3大映画祭全ての最高賞獲得となる”グランドスラム”を達成しました。

ちなみにジャファル・パナヒ監督の長男、パナー・パナヒが初の長編監督を務めた『君は行く先を知らない』は、2年前にフラッグ配給で日本でも公開されました。その意味でも、他人事とは思えず、パナヒ監督の受賞を心より祝いたいと思います。

また日本人監督では、学生映画を対象としたラ・シネフ部門で田中未来監督の『ジンジャー・ボーイ』が第3位に入賞という快挙を遂げました。実はこの田中未来監督はフラッグが運営している 映画学校ニューシネマワークショップ の[つくる]コース卒業生でもあり、今後の活躍が期待される若手監督の1人。フラッグにとっても喜ばしい知らせとなりました。

そして国際批評家連盟賞に瀬戸桃子監督のアニメ映画『ダンデライオンズ・オデッセイ(原題)』が選ばれました。カンヌ批評家週間のクロージング作品として上映されました。瀬戸桃子監督はフランスを拠点に活動しており、この作品もフランス=ベルギー合作でした。日本人のクリエイターやキャストの活躍の場が、日本国内にとどまらず世界に広がっている昨今の傾向を体現するような一例となりました。

日本映画の今後の展望

我々フラッグも、海外企業との映画作品の共同製作プロジェクトを複数進めています。今回のカンヌでも様々な海外のプロデューサーや監督達と打合せをしましたが、世界の映画人の日本に対する興味・関心は年々増してきているように感じます。

インバウンド観光客の増加やアニメ・ゲームを中心としたポップカルチャーの浸透、ディズニープラスのオリジナルドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』に見られるような根強い日本の伝統文化への興味、そして昨今の円安傾向によるコストダウンなど、様々な要因がその追い風となっています。昨今の日本の映画市場では、残念ながら観客の洋画離れが著しく、コロナ前に比べて大幅に洋画市場が縮小してしまっていますが、海外に向けた日本初の映画市場という意味では、新たな可能性を獲得しつつあるとも言えます。

とはいえ、トランプ米大統領による外国製映画へ100%関税をかけるという発言には、多くの業界人が今後の映画市場に対してネガティブな影響を与えかねないと疑義を呈しました。カンヌでもこの点を不安視する声が多く聞かれました。また、日本は映画の国際共同製作協定を中国とイタリアの2国としか締結しておらず、その他の国との共同製作においては税務面でのメリットを受けづらいといった問題があります。せっかくの好機を無駄にしないためにも、迅速に世界各国との連携を進めることが必要です。

現地では多くの業界人が日本映画の普及に尽力していました。
弊社も良いエンタメが世界に広がるよう、精進してまいります!

まとめ

今年のカンヌでは多くのパートナー達と現地でmtgを行い、今後のプロジェクトへの手応えを感じることができました。世界中の業界人が集まるこの貴重な機会をビジネスに最大限活かすとともに、自分自身の映画への思いを再確認し、モチベーションを最大化できる場所がカンヌです。今後も毎年よい土産を持って、カンヌを訪問できるようがんばりたいと思います。

ライター

久保 浩章

株式会社フラッグ 代表取締役
東京大学経済学部在学中の2001年にフラッグを創業し、04年1月に株式会社化。映画をはじめ、エンタメ業界のデジタルマーケティング支援を中心に手掛ける。

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