1,000作品観たプランナーが語る!『ぼっち・ざ・ろっく!』アニメヒットを支えたデジタルプロモーション

概要
アニメ市場が世界規模で拡大する中、作品の魅力を最大限に伝えるプロモーション戦略の重要性が高まっています。本コラムでは、自称“アニメオタクのプランナー”が、社会現象化した『ぼっち・ざ・ろっく!』を題材に、複合的なデジタルプロモーション施策について分析。
SNSやYouTubeを活用したファンコミュニティ形成から、コラボ施策や屋外広告などリアル展開まで、多面的な施策がどのように作品ヒットへとつながったのか、その成功要因を紐解きます。マーケティング・プロモーション設計に携わる方必見のコラムです!
目次
- はじめに
- 『ぼっち・ざ・ろっく!』とは
- プロモーションの展開について
- 立ち上げ期:Xキャンペーンによるフォロワーの獲得
- オンエア期:オリジナルコンテンツの展開
- 放送終了後:コラボ施策、屋外広告などのリアル施策
- デジタルプロモーション施策が作品ヒットを支える仕組み
- まとめ
はじめに
いまやアニメは“日本の文化”を超えた、“世界の熱狂”です。NetflixやCrunchyrollなど海外配信プラットフォームの拡大により、2023年には日本アニメ市場が初めて3兆円を突破。世界中にファンを持つ、日本発のエンタメとしての存在感はますます高まっています。
そんな中、1クールあたり40本を超える新作アニメがひしめく現在、作品の魅力を的確に届けるプロモーションの重要性は計り知れません。
今回は、これまでに約1,000タイトル以上を視聴してきた自称“アニメオタクのプランナー”が、作品そのものに惚れ込み、立体的なプロモーションが作品人気の獲得に大きく寄与したタイトルとして、「ぼっち・ざ・ろっく!」の事例を分析していきます。
『ぼっち・ざ・ろっく!』とは
原作は、はまじあき先生による4コマ漫画。
極度の人見知りで“ぼっち”な高校生・後藤ひとりが、偶然の出会いをきっかけに「結束バンド」を結成し、バンド活動を通して成長していく物語で、2022年10月、CloverWorks制作によりアニメ化され爆発的な人気を獲得しました。
放送後は、結束バンドのアルバムがオリコンやビルボードで1位、ライブは全国ツアーを開催、登場キャラが使う楽器は品薄に…。SNS上でも”キャラの魅力”、”邦ロックのクオリティ”、”突然暴走するギャグパート”など、様々な切り口で作品の魅力が投稿され、社会現象化していきました。
個人的には、結束バンドのメンバーの名前が、人生で一番聴いてきたバンドであるASIAN KUNG-FU GENERATIONのメンバーからきていることをはじめとして作品に散りばめられた邦ロックのオマージュでつかまれ、演奏シーンと楽曲の圧倒的なクオリティに衝撃を受けました。
劇中曲を収録したアルバム「結束バンド」は、2023年に最も再生したアルバムとなりました。
そんな”ぼざろ”は、作品自体のパワーがあったことは大前提ではありますが、ここに段階的で立体的なプロモーションが合わさったことでアニメ好きの外側にもコンテンツが広がっていったと考えられます。
プロモーションの展開について
立ち上げ期:Xキャンペーンによるフォロワーの獲得


2021年から公式Xで始まったキャンペーンでは、プレゼント企画などでコツコツとファンとの関係性を築き上げ、放送前から“空気を温めていた”のが印象的でした。こうした丁寧な土台作りが、のちの爆発的ヒットを支えていたと感じます。
オンエア期:オリジナルコンテンツの展開
放送直前には、声優・青山吉能さんが”ぼっち”でパーソナリティを務めるWEBラジオがYouTube上でスタート。リスナーとの交流もあり、後藤ひとりと青山吉能さんの魅力が交差する番組の配信をいちファンとして毎回楽しみにしていました。
また、オンエアが始まってからは、YouTube上でのオリジナルコンテンツとして、青山吉能さんが完全な初心者からギターの猛特訓を行い、高い技術を求められる劇中歌の演奏を目指す連載企画「ギターヒーローへの道」も更新されていきます。
さらに、バンドでの演奏があったエピソードの放送直後には、演奏シーンをYouTubeに即公開。SNSトレンドから流入したライト層をYouTubeで一気に取り込む流れができており、現在は2,000万再生を超えています。
作品のクオリティを宣伝スタッフが確信していたからこそ、公開後にユーザーがSNS上でシェアすることを見越しての展開により、大きく作品認知を獲得したと感じます。
放送終了後:コラボ施策、屋外広告などのリアル施策

放送後もIP展開は加速し、タワレコ、ドンキ、小田急電鉄などと次々にコラボ。さらには劇場版公開に合わせて山手線各駅に広告を展開した際には、「ぼざろもついにここまできたのか…と」勝手に感慨にふけりました。
この様に作品のヒットから各種コラボ、劇場版、ライブなど、様々な形でコアファンから一般ユーザーまでとの接点をデジタル/リアルを横断して提供し続けていました。
デジタルプロモーション施策が作品ヒットを支える仕組み

デジタルを中心とした立体的なプロモーションは、SNSやYouTubeなど複数のチャネルを活用することで、IP認知の拡大やファンコミュニティの形成・活性化に大きな効果を発揮します。
特にSNS上での情報発信やファン参加型企画、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進によって、新規ファンの獲得や既存ファンのエンゲージメント強化ができるようになります。
こうしたデジタル施策が作品への関心や熱量を高める土台となり、リアルイベントやコラボ施策と組み合わせることで、さらに話題性やブランド価値向上へとつながります。このように、複合的なデジタルプロモーションは、現代のエンタメIPヒットに不可欠な要素となっています。
まとめ
『ぼっち・ざ・ろっく!』は、原作/アニメーションとしての細部に至るまでつくりこまれたバンドアニメとしてのクオリティと、それを的確に届ける立体的なプロモーションの融合で大ヒットした成功事例です。
学園祭ライブの「星座になれたら」のトラブルからのあの激アツ展開、最終話で流れるアジカンの名曲「転がる岩、君に朝が降る」のエモーショナルさ、toricotの中嶋イッキュウやきのこ帝国の佐藤千亜妃による邦ロックファン大歓喜の楽曲、思わずバンドを組みたくなるような青春物語と、ぼざろの魅力をまだまだ伝えきれていないので、ぜひ各種配信サイトなどで視聴してみてください!
フラッグには私のように(それ以上に)、熱量をもったエンタメや推しが好きなプランナー、マーケター、クリエイターが多数在籍しています。作品の魅力や熱をファン目線で伝えるデジタルマーケティング施策の設計を全力でサポートしますのでぜひご相談ください!
ライター
蛯谷 颯一郎
デジタルマーケティング事業部 戦略コンサルティング部
前職のPR会社でのSNSプランナーを経て、フラッグにてクライアントのデジタルマーケティングの戦略設計やプロモーション施策をオンライン、オフラインを横断した統合的な企画を担当。
特に映画や漫画、アニメ、ゲームなどのエンタメ領域の知見を活かした企画を得意とする。